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祖父の句集は、人生前半史。

  • 執筆者の写真: socom5055
    socom5055
  • 2019年4月4日
  • 読了時間: 2分

祖父の人生の前半は小学校教諭約35年、後半はタケノコ農家約25年でした。


祖父は、師範学校を出て小学校教諭として勤務しました。当時は定年がなく、年金がもらえる55歳頃に退職するのが慣行だったようです。教育への思いを受け継いで、7人の子どものうち2人が教職につきました。


退職後に俳句の会に入会し、句会や小旅行に参加していたようです。祖父が本として残したのは一冊の句集です。そこには子どもの様子や、ふるさとの自然、家族への思いが詠まれています。人生の前半を句集にまとめたようです。


後半は、4月になると徳島の実家に戻り、2か月ぐらい1人暮らしをしながら、竹林でタケノコを掘り、農協に納めていました。農協まで2キロの山道を一輪車を押してタケノコを運ぶのは重労働です。大学生時代に、何度かタケノコ掘りを手伝いました。タケノコ掘りで汗をかいたあと、山に自生している金柑で喉を潤すときに、あまりの酸っぱさに祖父が顔をしかめていたのをいまでも懐かしく思い出します。


祖父の句集のタイトルは「雑句 葉蘭(ざっくばらん)」。悠々自適の年金暮らしではなく、重労働のタケノコ掘りをしていた祖父は、勤勉というより、おそらく働いていなければ退屈だったのだと思います。


土に十字型の割れ目を見つけて、サイズを予測して、当たりをつけた場所に鍬を入れて、無傷で掘り出す。「これは見事、農協に引き取ってもらえるぞ」。タケノコ掘りは、楽しみでもあったような気がします。

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